ジョージアワインの代表とも言える、クヴェヴリ製法とは?
クヴェヴリ製法(Qvevri winemaking)は、ジョージアワインにおける最も伝統的かつ象徴的なワイン製法であり、約8,000年もの歴史を持つ、世界最古のワインづくりの形です。
この方法では、「クヴェヴリ」と呼ばれる素焼きの壺を地中に埋め、その中でブドウの果汁、果皮、種子、時には果梗までも一緒に発酵・熟成させます。
2013年には、このクヴェヴリ製法がユネスコの無形文化遺産に登録され、ジョージア国内のみならず、ナチュラルワインの文脈でも世界的に再評価されつつあります。
近年では、特に30代・40代の女性の間で、健康志向やナチュラルなライフスタイルに対する関心が高まっており、クヴェヴリ製法で造られるジョージアワイン🍷
とりわけオレンジワインは、その自然な製法や美容面でのメリットから注目を集めています。
クヴェヴリってどんなもの?
クヴェヴリ(Qvevri)とは、ジョージアで8,000年以上にわたってワイン造りに使われてきた素焼きの大型壺です。形は卵型で、容量は小さいもので約200リットル、大きいものでは3,500リットルを超えることもあります。

もっとも大きな特徴は地中に埋めて使うこと。地面に埋めることで温度が一定に保たれ、発酵や熟成が自然に進みます。内側は松脂や蜜蝋でコーティングされ、ワインが土や雑菌と直接触れないようになっています。
近代的なステンレスタンクや木樽とは異なり、クヴェヴリは酸素との微細な交換がゆるやかに行われるため、味わいに柔らかな口当たりと独特のまろやかさをもたらします。
クヴェヴリは卵型の粘土製容器で、200Lから3,500L以上までサイズは様々。地中に埋めることで、年間を通して温度が一定に保たれ、ワインの安定した発酵と熟成が可能になります。
- 卵型の形状が自然な対流を生み、果皮や種が均等にワインと接触するようになり、液体が均一に熟成される
- 果実味とタンニンのバランスを取るうえで非常に理にかなった形状
- 地中埋設で温度変化が少ない
- 蜜蝋や石灰のコーティングで防腐・密封し、酸素のコントロールや微生物の管理に最適
- 素材はすべて自然素材(粘土+蜜蝋)
製法のプロセス:クヴェヴリ vs ステンレスタンク
クヴェヴリ製法は、伝統的で自然志向のジョージアワイン造りを象徴する方法ですが、近代ワイン醸造の主流であるステンレスタンクと比較すると、多くの点で対照的です。
クヴェヴリ製法の工程
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収穫と選果
完熟したブドウを手摘みで収穫し、不良果や未成熟果を取り除きます。特に自然派志向の生産者は、無農薬・有機栽培のブドウにこだわる傾向があります。 -
破砕と投入
ブドウを破砕し、果汁・果皮・種・必要に応じて果梗も含めてそのままクヴェヴリに投入します。 -
自然酵母による発酵
ブドウに付着している野生酵母で発酵が始まります。温度管理は地中の断熱効果に委ねられており、人工的な制御は行いません。 -
櫂入れ(カクシ)
発酵中は1日1〜2回、棒で撹拌し、浮いた果帽を液体に沈めます。これにより果皮との接触が均等になり、色素やタンニンの抽出が促進されます。 -
熟成
発酵終了後も果皮・種と一緒に5〜6ヶ月間熟成。クヴェヴリの内側から酸素がゆるやかに供給されることで、酸化に強く複雑な味わいが生まれます。 -
澱引きと瓶詰め
ワインを上澄みから取り出し、無濾過・無清澄のまま瓶詰めする場合が多く、酵母やタンニン分が残ります
ステンレスタンク製法との比較
ステンレスタンクは現代のワイン醸造において広く使用されており、衛生面・温度管理・再現性の高さから、世界中でスタンダードとされています。

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温度管理
ステンレスタンクは冷却装置で発酵温度を正確にコントロールできます。発酵のスピードや香りの方向性を意図的に調整可能です。 -
酵母の選択
商業酵母を添加して、狙った香りや味わいを得るのが一般的です。味の安定性や再現性を重視します。 -
酸化防止
密閉性が高く、酸化を極力抑えたクリーンな仕上がりになります。 -
澱引きと清澄
発酵後はしっかりとろ過・清澄されるため、透明感があり澄んだワインが得られます。
項目 | クヴェヴリ製法 | ステンレスタンク製法 |
発酵容器 | 素焼きの陶器壺(地中に埋める) | 密閉された金属製タンク |
酵母 | 自然酵母(野生) | 商業酵母(選択的に添加) |
温度管理 | 自然任せ(地中の温度) | 人工管理(精密な温度制御) |
酸化コントロール | 穏やかな酸化(微小酸素供給あり) | 酸化抑制(密閉による管理) |
味わいの傾向 | タンニンが豊かで複雑、野性味 | フレッシュで果実味が前面 |
清澄・ろ過 | 無清澄・無濾過が多 | 清澄・濾過処理されること多 |
自然との調和を大切にしながら、ワインに土地や季節、人の手仕事までも映し出すような手法。
一方、ステンレスタンク製法は、品質の安定性や市場ニーズに応える現代的なアプローチと言えるでしょう。ジョージアワインのステンレスで作られたワインも今後紹介予定!
オレンジワインというジャンルと美容・健康とのつながり
クヴェヴリ製法で造られる代表的なジョージアワインの1つが「オレンジワイン」
白ブドウを赤ワインのように果皮や種と一緒に発酵させることで、琥珀色のワインが生まれ、豊かなタンニンとコクが加わります。
ジョージアワインの中でも特にこのオレンジワインは、ナチュラルワインとしての評価も高く、近年注目を集めています。女性にとって、オレンジワインの魅力は味わいだけではありません。
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ポリフェノールが豊富
果皮や種と一緒に発酵させるため、ポリフェノールや抗酸化物質が多く含まれています。これらはエイジングケアや美肌効果にも期待が持てます。 -
無添加・無濾過
クヴェヴリワインの多くは、亜硫酸塩や化学的な清澄剤を加えず、身体にやさしいナチュラルな造りです。 -
腸内環境の味方
天然酵母による発酵で生きた酵母が含まれることもあり、腸活を意識する方にも支持されています。
自然派ライフスタイルを大切にしたい女性にとって、クヴェヴリ製法のジョージアワイン、特にオレンジワインは、心にも体にも寄り添う存在なのです。
ジョージアワインの希少性と背景
ジョージアは、ワイン発祥の地とも言われる国ですが、その生産量は世界全体のごくわずか。日本市場においては、
ジョージアワインは全体の1%にも満たない存在です。
しかしその希少性こそが、ナチュラルワインや伝統製法を重んじる層にとっては価値となっています。現在では、小規模な家族経営のワイナリーがクヴェヴリ製法を受け継ぎ、自然農法や無添加にこだわったワイン造りを続けています。
彼らにとってワインとは、商業的な製品ではなく、文化そのもの。
ジョージアワインが自然派ワインとされる理由
自然酵母での発酵、無添加、無濾過、非介入主義。
これらはすべて、現代のナチュラルワインの定義と合致しています。農薬や化学肥料に頼らず、ブドウが本来持つ力を引き出し、人間はそれを手助けするだけ。自然とともにあること、自然を受け入れることにあります。
また、クヴェヴリの卵型構造が生み出す自然な対流や、地中の安定した温度環境も、自然の力を最大限に活かす設計思想そのものです。
これらは科学的に制御された現代のワイン製造とは対照的に、自然との共生を前提とした哲学的アプローチといえるでしょう。
ジョージアワインの現代の再評価
クヴェヴリ製法で作られたジョージアワインは近年ナチュラルワインムーブメントの影響もあり、欧米や日本のワイン愛好家、レストラン業界から再注目されています。
他国のワイナリーでもクヴェヴリにインスパイアされたアンフォラを用いたワイン造りが増えていますが、ジョージアのクヴェヴリ製法は文化的背景や土着酵母の活用など、その深みがまったく異なります。
またジョージア国内でも若手生産者が伝統を守りつつ、新しいスタイルの模索を行っており、過去と未来が交差する今、さらに多様な表現の可能性を秘めています。
まとめ
- クヴェヴリ製法は、単なる醸造技術ではなく、ジョージアという国が誇る文化遺産
- 自然との共生を体現した哲学でもある
- 限られた地域、限られた人々の手によって丁寧に受け継がれてきたワイン
- 世界の大量生産型ワインとは一線を画す特別なワイン
さらに詳しく知りたい人はNational Wine Agency of Georgia 日本公式ウェブサイトもチェックしてみてください
クヴェヴリって何?その“壺を埋める”ってどういう仕組み?
クヴェヴリは卵型の素焼き壺で、地中に埋めて発酵・熟成を行うジョージア独自の伝統技。地下の一定温度が果皮・種も使った自然発酵を穏やかに促し、複雑味やミネラル感を引き出します。8,000年の醸造技術の象徴です
その製法がUNESCO遺産って本当?
はい!クヴェヴリ製法は2013年にUNESCOの無形文化遺産に登録されました。単なる製法ではなく、地域文化・家族の伝承・ライフスタイル全体が評価された証です
どうやってその壺は作られるの?
地元粘土を使い、手作業で積み上げて形を作る伝統技。焼成には数十日要し、土・湿度・技術が結集して完成する芸術品的な工程です
オレンジワインって?普通の白とどう違うの?
白葡萄を果皮・種ごと発酵させた「オレンジワイン」は、クヴェヴリと親和性が高く、柑橘やスパイスの豊かな香りとふくよかな風味が特徴です
他の国にも似た技術あるの?
陶器での醸造は他国でも見られますが、地中に埋めて使うスタイルはジョージア特有。スペインの“vino de tinaja”やポルトガルの“vinho de talha”くらいしか類似例はありません
化学添加物不要って本当?
クヴェヴリ製法では自然酵母・澱残存・タンニンの働きで、保存料なしでも安定。化学的処理を避けつつ、自然に熟成する仕組みが備わっています
フランス方式との違いって?
フランスではステンレスやオーク樽を使用し温度管理しますが、クヴェヴリは地中の自然な調温により酸化と発酵が穏やか。発酵から瓶詰めまで一連の“自然な一手”で完結します
クヴェヴリってどうやって掃除するの?
収穫後、ワインを抜いたクヴェヴリはすぐに洗浄します。まず水で澱や果皮を落とし、その後温水と天然の植物ブラシで磨きます。最後に石灰水や熱湯で殺菌し、再利用前に完全乾燥させるのが基本です。これにより次年度も雑味なく発酵が可能になります。
蜜蝋コーティングって何のため?
蜜蝋(ビーズワックス)は、クヴェヴリ内部の微細な気孔を塞ぎ、不要な酸化や液漏れを防ぎます。また香味への影響が少なく、天然素材なのでワイン造りに安全。加工時には加熱した蜜蝋を薄く塗り広げ、内面を保護します。これで長期間安定した使用が可能になります。
石灰での掃除は安全なの?
はい、伝統的に使われる石灰水は、強アルカリ性で殺菌力が高く、化学洗剤を使わずに衛生状態を保つ方法です。使用後は十分にすすぎ、乾燥させることで石灰分は残りません。ジョージアでは何世代にもわたって続く安全な管理法です。
クヴェヴリの寿命って何年くらい?
適切な掃除と加工を行えば、クヴェヴリは数十年、場合によっては100年以上使用可能です。地中に埋まっているため外的劣化が少なく、定期的な石灰消毒と必要に応じた蜜蝋補修が寿命を延ばします。長寿命こそ、この製法が受け継がれる理由のひとつです。